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乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。
乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。
Auteur: 三木猫

第一章 幼児編 第一話 前世との再会

Auteur: 三木猫
last update Date de publication: 2025-10-28 14:10:23

「どうしてこうなった…」

机の上に置いた鏡と向かい合い、自分のやたら整った顔から零れた溜息混じりの呟きは宙に消えた。

この世に生を受けて5年目。でもって明日六歳の誕生日を迎える今、私は覚醒した。

いや、こんな言い方するとおかしいよね。

正しくは『思い出した』だ。

でもね、あのね。一つ言わせて欲しい。

私だってこんな状況思いもよらなかったよ。

だってさ?誰が思う?

生まれ変わったら、前世でプレイしていた乙女ゲームのヒロインになっているなんて。

はぁ…とまた溜息をついて、私はぼんやりと前世の事を思い出す。

前世の私は所謂隠れオタって奴だった。

外では普通に三十路に近い何処にでもいるであろうOLに擬態し、家ではネットサーフィンをおやつに乙女ゲームを主食として生きてきた本もゲームも美味しく頂ける活字中毒者。

二次創作や薄い本も嫌いじゃない。ううん、この言い方は卑怯だね。大好物です。常に美味しく摂取してきました。腐女子って言葉を正しい意味で私に与えられた称号として意識していた。

しかし、前世の私はすこぶる健康体だったし、まぁ脳内はある意味異常者かもしれないけどそれはそれなりに擬態してきた為、世間的にも悪い印象は与えていないはず。

そんな私は何故死んだのか。

これが、怖い話で家に押し入られたストーカーに刺されのだ。

刺された瞬間のあの男の顔は生まれ変わった今でも瞼の裏に焼き付いて忘れられない。さっきまで忘れてたじゃんって突っ込みはなしの方向で。

そして、何よりも気がかりがある。部屋に残った腐の産物、黒歴史を誰かが片したのかと思うと私は新しい今の人生を投げ出したくなるくらい恥ずかしい。羞恥で死ねる。

もう、どっちを後悔していいのやら…。

……。

いやいや。落ち着け私。

話が盛大にそれている。

前世の私の話は今は置いておくとして、問題なのは前世でプレイしたそこそこ気に入っていた乙女ゲームの世界に生まれ代わっていたって事だ。

こういうのってさ?普通はさ?

悪役令嬢、とか、学校一人気のクラスメート、とかさ?

そういうヒロインのライバル的な悪い立ち位置とか一切関係ない脇役とか、所謂ヒロイン以外の立場に生まれ変わってさ?運命なんて変えてやるっ!!とか言って盛り上がっていくのが常套句って奴じゃないの?

え?なんでヒロインなの?

ヒロインなんかに生まれ変わったら面倒臭い事この上ないじゃん。

だって男がわらわら寄ってくるんだよ?

いい?皆落ち着いて考えて?

乙女ゲームにいるような男子が普通にいたら、正直どん引きじゃない?

壁ドン、無理矢理チュー、お姫様抱っこを突然に、だよ?どっかの歌のタイトルみたいだけど、ホントこうだよ?

いやいや、あり得ないでしょ。

確かにそう言うのが好きな人はいると思う。

でも私は、前世の記憶が戻った私は、大の『男性恐怖症』である。と言うかならざる負えないよね。

前世の私は自慢じゃないけど結構モテた。世間では美人と言われる部類だったと思う。まぁ腐ってる内側を知らないからなんだろうけども。

小学生の頃は誘拐未遂が数回、誘拐されたのが数回、中学生の時はラブレターや呼び出しで休憩時間は全て消え失せ、高校生の時は帰り道に暗がりに連れ込まれた事数十回。大学に入って少しは何か変わるかと思ったら連れ込まれ回数が増加、電車通学になり毎日痴漢の嵐。流石に社会人になってもそれは嫌だったから電車通いしなくてもいい様に必死に自動車免許を取り車で通勤するようになって危険が減ったと思ったらストーカーの被害にあい、終いには殺されるという…。

これで男性を怖がるなって方が無理じゃない?

それに私の前世は父がいない母子家庭だったから尚更、男性のイメージは悪くなる一方だった。そんな私を女で一つで育ててくれたお母さんも私が大学に入った時に亡くなっちゃったから、私は一人で生きてきたんだけど。

こんな目に日常的に遭遇し、名誉挽回の機会もなければ男なんて必要ないと思っても仕方ないと思うの。

でも勘違いしないで欲しい。

男性にも良い人がいるってことは知ってるんだよ?

その証拠に遠くで見ている分には何の問題もないもの。

そう、鑑賞している分にはなーんにも問題ないっ!

二次元の世界の男はいいんだよっ!

私を見てる訳じゃないからっ!

三次元でも観賞用なら全然OKっ!

私を見てる訳じゃないからねっ!

でも、でもさっ!?

ここは乙女ゲームの中で私はヒロインな訳でっ!!

って事はさっ!?って言う事はさっ!?

男が問答無用でやってくる訳じゃんっ!?ああぁぁ…。

触られるだけでも、鳥肌ものなのに、あ、あ、あり得ないっ!!

想像するだけでも鳥肌が、あわわわわっ!!

私の人生既に詰んだかもしれない。

「どうしてこうなった…」

本日2度目。溜息を深くしてもう一度呟いた。

正直男なんて私の人生にはもういらない。

なのに私は乙女ゲームのヒロインになってしまった。

私の苦手な男がもれなく付いて回ってくる。例えイケメンであろうと男は男。

近寄ることなど考えられない。

となると、今現在考えられる手段は…

『攻略対象キャラと出会わなくする事っ!!』

これしかないっ!!

その目標の為にも今現在のゲーム情報を確認しなくてはっ!!

思い立ったが吉日。

私は、椅子からひょいっと飛び降りると、まだまだ低い身長ではやっと届く位置にあるドアノブを回して部屋を出た。

「えっと…ママは…居間かな?」

キョロキョロと辺りを見渡し、姿がない事を確認すると、そのまま部屋を出て右、廊下の奥へと向かう。因みに、私の部屋の右隣がママの部屋。迎えにお風呂、左へ行った奥が玄関だ。

隣のママの部屋からは仕事をしている音はしなかったから、多分、居間にいるはず。

てててっと早足で、廊下を進み背伸びしてドアノブを回し居間へ入ると、そこにはラグの上に直に座り、机の上にあるノートパソコンと睨めっこしているママの姿があった。

「ママー」

「あら?美鈴(みすず)どうしたの?」

呼びかけると、私に直ぐに気付いたママがにっこりと微笑んだ。

…ママ、目の下の隈さんが活性化してるよ?何徹目なんだろう…。綺麗な金髪もくすんでるし、碧い宝石のような瞳も曇っている。スタイル抜群で美しいママの背中は猫背。うぅ~ん…。

っと、いけないいけない。つい遠い目をしてしまった。ママの隈さんについては後でホットタオルでも作ってあげるとして今は当初の目的を果たさなくては。

「おえかきしてあそびたいから、みすずにノートちょうだい?」

「ノートが欲しいの?」

前世の記憶を取り戻したから、普通に喋れるものの、5歳児が急にシャキシャキ話し始めたら恐怖体験以外の何物でもないから敢えて舌っ足らずで話しかける。

すると、ママは優しく微笑み立ち上がるって居間にあるママ専用の棚からノートを一つ取り出してくれた。

「はい。これでいい?」

渡されたノートを満面の笑みで受け取り、その表紙を見て、私とママの時間は止まった。

『ヤンキー×優等生 ネタ帳』

黒のマジックペンでくっきりはっきりと書かれていた。ど、どうしよう…ママの黒歴史。

そっとばれないように、上目遣いでママの顔を窺うと、あ、…駄目だ。青ざめながら顔を赤くしてる。

ママって確か少女小説作家だったよね?

…もしかして、違う方面でも書いてるのかな?それとも二次?うぅん…悩み所だけど、今はそんな事より…。

「ママー?これなんてかいてるのー?」

ママの矜持を立て直すっ!

大丈夫だよ、ママっ!!私は理解がある娘だよっ!!

もう少し成長したら一緒に萌えトークしようねっ!!その為にも今は解らなかった事にするよ、ママっ!!

「こ、これはね。美鈴ちゃんがもう少し大人になったら分かる様になるから今は忘れていいのよー」

ママ、頑張ってっ!!遠い目から帰って来てっ!!

優しい笑顔カムバックっ!!

「こ、このノートはダメね。ちょ、ちょっと待ってねっ」

「うんっ」

バタバタと慌ててノートを本棚に突っ込み、妬けになったのか新品の五冊パックされたノートを取り出し、パックをバリバリ剥ぎ取ると、一冊私に向かって差し出した。

「こ、これなら大丈夫。これを使いなさい」

「うんっ。ありがとー、ママ」

両手でノートを受け取り、一緒に鉛筆も受け取った。まだ手が小さいからシャーペンだと使い辛いので有難い。

やっぱりママは優しい。ちょっとママの黒歴史覗いちゃったけど、私には何の問題もない。むしろこんなママが大好き。

それを全力で伝えようと思うっ!!

「ママ、ママっ」

「なぁに?」

「わたしね、ママのこと、だいすきっ」

えへへっ。

照れながらも伝えると、ママは泣きながら全力で私を抱きしめた。

骨がきしむ音がするけどそこはぐっと我慢するよ。理解ある娘だからねっ!!

でも流石に骨が砕ける前に「仕事の邪魔にならないように部屋に戻るね」とたどたどしく伝えて戦利品を持って部屋に帰還した。

さて、と。

椅子に座り机の上に置いておいた鏡を手繰り寄せるとノートを広げる。

誰かに見られるようなへまをするつもりは無いけれど、万一見られたら面倒だから態と3ページ目から書き始める。

何を書くかと言うと、乙女ゲーム転生ネタの定番のアレだ。

乙女ゲームのネタ帳だ。

記憶を元に、ここがどんな世界だったのか、攻略対象が何人いたのか。等々必要な記憶をここに書き残すのだ。

いざという時に焦らないように。

えーっと、まずは、このゲームの内容だ。

ここは前世で私がプレイしたゲーム『輝け青春☆エイト学園高等部』(世間では結構評価の低くやる人が限られているマイナーゲームだった)の世界だ。舞台は日本。ただし、前世の私が暮らしていた日本とは少し違う。地毛で私みたいな金髪で水色瞳の日本人がいてたまるか。いやいるかもしれないけど、こんなに光り輝かない。ってか周りを見れば、水色やら赤やら蛍光ピンクやらあり得ない髪色が歩いている。あり得ないよ。だからパラレルワールドと言った方がいいかもしれない。私の前世に生きた日本のようで日本ではないのだ。

その異なる日本にあるエイト学園と言う高校に主人公が入学する時から始まり、プレイヤーである主人公が三年間、己を磨き攻略対象キャラクターとデートやイベントを繰り返し、恋に落ちて卒業式に告白されエンディングを迎えると言う、普通の学園ものの乙女ゲームだ。

だが、このゲーム他の乙女ゲームと違う所がある。それはーーー。

【攻略対象キャラが半端なく多い】と言う事。

男性恐怖症の私にこのゲームの世界に、しかもヒロインに転生させるとか、神様どんだけ鬼畜なんだ。

普通の乙女ゲームなら数人のすり寄り回避で済んだはずなのに…。

このゲームの攻略対象キャラクターの人数は多すぎて正直ほとんど覚えてない。

そこまでやりこんでいなかったかな?とも思ったけれど、そんなはずはないと直ぐに否定した。

だって【ゲームをやるからにはフルコンプ】が私のモットーで例え好みじゃないキャラだとしても必ず一度は攻略していたはずなのだ。

要は必ずやり込んでいて、例え面白くないゲームでも記憶に残っているのに、何故か思い出せない。記憶力は良い方なんだけどなぁ。

となると、何か前世の記憶を思い出させるのに邪魔なフィルターがかかっているのかもしれない。

…念の為に攻略対象キャラクターを思い出せる限り書きだしてみよう。

思い出せる記憶の順に、私はペンを走らせた。

樹龍也(いつきたつや) 三年生。生徒会長。メインヒーロー。必要パラメータ、文系、理系、運動、雑学、芸術、優しさ、色気を全てMAX状態で攻略可能。メインヒーローにつき、出会いは強制的。入学式の当日に主人公が廊下の曲がり角でぶつかると言うテンプレ的な出会いを迎える。美貌、権力、知力、体力全てを兼ね備えたオールマイティ型キャラ。実際にそんな人物がいたら怖いよねって笑い話が今現実のモノに。兎に角ここは全力回避したい人物。

白鳥葵(しらとりあおい) 三年生。生徒会副会長。必要パラメータ、文系、運動、優しさをMAX状態で攻略可能。白鳥棗(しらとりなつめ)とは双子の兄弟で葵の方が兄。そして、主人公の義理の兄である。ここ重要。赤丸チェック。

白鳥棗(しらとりなつめ) 三年生。生徒会書記。必要パラメータ、理系、運動、雑学をMAX状態で攻略可能。双子の弟。やはり主人公の義理の兄である。はい、ここも重要。赤丸チェック。

白鳥鴇(しらとりとき) 担任教師。必要パラメータ、文系、理系、雑学をMAX状態で攻略可能。双子の兄であり白鳥家長男。そしてやっぱり主人公の義理の兄である。ここもかなり重要、テストに出ます。

猪塚要(いのづかかなめ) 二年生。生徒会役員だったはずだけど、会計だったか文化部長だったか全く思い出せない。ただ、…綺麗な顔で雑な言葉遣いだったのはやたら覚えている。ギャップキャラの最たるキャラじゃなかったかな?

花島優兎(はなじまゆうと) 一年生。必要パラメータ、雑学、優しさ、色気をMAX状態で攻略可能。…だったはず。色気の所が定かじゃない。もしかしたら色気の所だけMAXじゃなくて半分だったのかも…?あ、でも確か主人公の幼馴染だった気もする。

……ピタッ。

私の手が止まった。

「ふふふ…全っ然思い出せないわ~…」

前世の記憶が甦ってもさ、ほら。前世の時ですら思い出せなかった事を今思い出せるわけがないじゃない?…はい、言い訳です。ごめんなさい。

このゲーム確かに全員攻略したはずなんだけどなー…。

攻略対象が多すぎて今書いた六人は多分半数にもいってない…。

やっぱり私の人生詰んだんじゃ…?

メインヒーローは覚えてて当然だよね。ゲーム開始で強制イベントで必ず会されるからどのキャラ攻略するにしても見せられるシーンだし印象に強い。

白鳥家の三人は主人公と絶対関わるから記憶から消される事はない。同じ理由で優兎もだ。

猪塚は…多分私が一番好きだったキャラじゃないかなーと思う。だから思い出せた、んだと思う、が、攻略するためのパラメータが思い出せない。

やたら面倒だった気がするんだけど、それも微妙だ。残念過ぎる私の記憶力。何でだ…。

攻略キャラあと何人いたかなー…。

全然思い出せないけど、最低でも12人はいる筈だ。

何故断言できるかと言うと、攻略対象キャラの名前には、干支が含まれているからだ。

ゲーム製作者が分かりやすくするためにそう設定したんだろう。

色んな男が選べるのがこのゲームの売りだし、それは別にいいんだけど…12人でも多すぎない?

果たして本当に回避出来るのかな、これ…。

一抹の不安がよぎった気もするが、気の所為だと思い込む。

き、気を取り直して、思い出せるところは全てノートに書きだした。

これから記憶を取り戻す度にこのノートを更新していくとして。

次は自分の情報だ。一応これは書き留めずに脳内整理として、考えてみる。

まず、私の名前は美鈴。佐藤美鈴(さとうみすず)だ。これが今の人生の名前。前世は西園寺華(さいおんじはな)で、正直前世の方がよっぽど乙女ゲームヒロインっぽい名前である。

まぁ、それはいいや。

顔も髪色も瞳の色も全部母親似で瓜二つと言われている。ただ金髪ストレートのママと違って私の髪はふわふわのウェーブがかかってる。ここはどうやらパパに似たみたい。

パパは私が赤ちゃんの時に亡くなっていて、ママは女手一つで私を育ててくれている。

ママは少女小説作家で売れっ子。お蔭で生きて行く上で困ってはいない。…さっきの黒歴史の方が実は稼げているんではないか?って思わなくもないけれど、あえてそれには触れない。…ママのあの黒歴史。パパは知ってたのかな…?

…っと、いけないいけない。触れないと誓ったばかりよ、私。

えっとなんだっけ。

あ、そうそう。自分の事の確認だよね。

ゲームでは祖父母の存在は描かれていなかったけど、ママの方の祖父母はもう既に亡くなっていて、パパの方にはママと私を溺愛する祖父母がいる。

毎年、夏休みと冬休みには里帰りしている。田舎だけどのんびりしていい所だよ、うん。

本当に良い所で、むしろあっちで暮らしたい。

変な男もいないし、イケメンとか面倒なのもいないし、あるのは畑と田んぼとお爺ちゃんお婆ちゃんだけ。若い人がいない訳じゃないけど、ママの顔見知りが主だし。男性も大抵既婚者だし。なんてパラダイス。

でも、ママの仕事上電波の欠片もない所では暮らせないんだそうだ。

うぅ…お祖母ちゃんの作ったおはぎ食べたいなぁ…。

なんてお祖母ちゃんのおはぎの味が恋しくなった辺りで、私の身の上の確認は終わった気がする。

次は、これからの事を考えよう。

このゲームに出てくる中で真っ先に私と接触してくるのは幼馴染である【優兎】だろう。

確か私の通う小学校に転校してくるはずだ。

あれ?って事は私が学区内の学校へ行かなければ、優兎と出会う事はなくなる…?

そうだよっ、私が本来行く筈の学校に進学さえしなければ、シナリオが変わるよねっ!?

小学校は共学しかないけど、中学になれば近所って言うか同じ地区の山の中に一つ女子校がある。そこにいけばイケメンに会わずに済み、アルバイトをしつつママを養いながら隠れ蓑生活が出来るじゃないっ!!

確か白鳥家の父親にママが一目惚れされるのは、主人公が中学一年の時だから、出会いがなくなるママには悪いけど上手くいけばこっちもまたシナリオ回避が出来るかもしれない。

進む道が見えてきた気がした。

何としてでもイケメンとの出会いを回避し、ママと二人田舎暮らしもしくは隠れ蓑生活を手に入れる為。

私はイケメン回避作戦に打って出る事にした。

頑張れ私っ!!

しっかりとノートを胸に抱きしめ、私は勢いよく立ち上がった。

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  • 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。   小話58 後日談その5(前世の自分へと思いを馳せる)

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  • 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。   小話56 後日談その3(『輝け青春エイト学園高等部』と『無限』⑤)

    片手にどうにか双子の娘達を抱え込み、ペンでまず俺の名前を書いた。「今佳織母さんに説明したのは俺の意思が生まれた一番最古の前世だ」「ふむふむ」「で、俺はここからまた、この世界に転生した」矢印を下に引いて俺の次の前世の記憶と書く。「そして、ここからリョウイチさんの干渉が始まる。そこまでは干渉ではなく見守りの状態だった。そして、なんでここでリョウイチさんの干渉が入ったのか。それは恐らく佳織母さん達の前世が繋がったからだ」もっと言うなら、佳織母さんにリョウイチさんが惚れたから、って事だろう。「けど今はリョウイチさんの視点ではなく俺の視点で話す。その次に真っ先に修正されたのは佳織母さんの立ち位置だ。それまで横暴だった佳織母さんはその修正により、佳織母さんの魂修正が入った。要はさっき佳織母さんが言った子供を大事にする要素だな。勿論他にもこまごまとあるだろうが、リョウイチさんが一番直しやすかった所から入ったんだろう」俺の名前の下に佳織母さん修正済みと書いた。「で、ここでリョウイチさんのミスが一つある」「…都貴静流、かしら?」「その通り。アイツが違う体に転生して、美鈴を狙い始めたんだ。その時はもう佳織母さんの修正が済んだ後。もっと言うなら、暫く他の世界を経由して来た後なんだよ」都貴静流の名前を佳織母さんの横に書く。「予想外の動きにリョウイチさんは次から次へと修正を繰り返した。数えきれないくらい修正したんだろうな。修正は沢山あった。暫く双子が生まれない時もあったし、優兎が転校してこず親に愛される、それこそ、所謂攻略対象者達と美鈴がくっ付いた時もあった。面白いのがそのどの世界軸でも俺は死んでいたって事だな」「そうだったの?」「あぁ。何度も死んださ。美鈴を想いながらな。何度も何度も修正を見て来たし、その数の多さの証拠があの都貴静流の転生体の多さだ」何度も何度も転生を繰り返し、発生した出来事を最初は何かしらでまとめていたが、最終的に佳織母さんに知らせる意味も込めて乙女ゲームと言う形をとったのだろう。「俺達は前世の記憶と言う形で混じり合ったが、本来人間の生は、命が終わった時点でリセットされねばならない。けれど、前世で繋がってしまったために新たな芽として生まれていた命が一つの大木として育ってしまった」「生の本流が出来上がってしまったのね」「そうだ。そして

  • 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。   小話56 後日談その3(『輝け青春エイト学園高等部』と『無限』④)

    「ごほッ…」俺に届く筈の手は届かなく、美鈴はその場に崩れ落ちる。都貴静流の手には、赤く滴る血が流れるサバイバルナイフがあった…。「きゅ、救急車っ!!」優兎が兎の可愛い鞄から電話を取り出し、119番にかけている。「あ、あはは…白鳥さんッ、なんて、なんて美しいんだっ…」都貴静流がサバイバルナイフを空にかざして恍惚に呟く。「もう一度…もう一度その血を魅せてくれ…あぁ、堪らない…」「気持ち悪いんだよっ!!てめぇはっ!!」力の限りそいつの顔面を殴り付け、地面にそいつが座りこんだ隙に美鈴を抱き起す。口元から血を流す美鈴の顔はどんどん血の気を失って行く。「…ぉ…き…」「喋るなっ!今、病院に連れてってやるからっ!」「…さ、む、ぃ…」慌てて着ていたジャケットを脱いで美鈴の背中の刺し傷を塞ぐようにきつく巻きつける。「……ぉ…ぃ…どぉ、…こ…?」「美鈴っ!大丈夫だっ!俺はここにいるっ!」遠くから救急車のサイレンが聞こえて来た。俺は美鈴を乗せるべく抱き上げ立ち上がり、少しでも早く救急車に乗せれるようにと走った。目の前に救急車が止まり、隊員の人が出した担架に美鈴を乗せて、美鈴が救急車の中に運び込まれ、救急車はそのまま走り去っていく。救急車を見送っていた、その時。ドスッ―――。再び鈍い音が聞こえた。今度は俺の脇腹から。「邪魔…邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔なんだよぉぉぉぉぉぉっ!!」「それ、は、こっちのセリフだっ!!」痛みはあった。けど、今はそれすらも凌駕する怒りが俺を支配していた。殴り返して、争って、最終的に都貴静流の持っていたナイフが都貴静流の胸に突き刺さり、そいつは倒れた。見届けて、俺は血が流れる体を引きずって車に乗り込み、家へと帰った。ソファに座りこみ、止まらない血を手で抑えながらテレビを点ける。『先程速報が入りました。○○大学で起きた殺傷事件で男に刺された女子生徒白鳥美鈴さんが先程亡くなりました』…知っていた。あの状態から美鈴が息を吹き返す訳がないと。知っていたのに、まだ、何処かで…生きていてくれているんじゃないか、と。「………美鈴…。今、俺も逝く…」瞳から溢れる涙を拭う力すら消えた俺は、そのまま闇に落ちた…。※※※こうして俺が美鈴と恋仲になりホストを辞めて幸せになると誓ったその時に、都貴静流に美鈴は殺さ、そして俺もまた殺さ

  • 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。   小話56 後日談その3(『輝け青春エイト学園高等部』と『無限』③)

    美鈴に惚れた自覚を持って、それからまた一ヶ月後。「わ、私、鴇お兄ちゃんが好きっ」そろそろ来るだろうと思ってたが、予想外に早い美鈴から告白に俺は心の中でガッツポーズをした。俺らしくない?知るか。嬉しい時は喜ぶものだろう。「俺もだ、美鈴。愛してる」美鈴をきつく抱きしめると、美鈴はまた嬉しそうに笑った。この時の俺達は幸せの絶頂でいつまでもこの幸せは続くのだと、そう思っていた。ある日、俺は親父の勤めている会社へと美鈴とこれからも一緒に、あわよくば結婚する事を伝えに向かっていた。「…兄さん」「何故ここに?」声がして前を向くと、そこには双子の弟の葵と棗がいた。二人共俺と同じ血が流れているはずなのに、どちらも立派に大学へ通い、同時にアルバイトもこなしているようだった。「葵に棗?それはこっちのセリフだ。お前達は何故ここにいる?」「…白鳥の姓を抜けようと思いまして」「しがみつく価値のない家なので」「成程な」「兄さんは?」「似たようなもんだ」「そうですか。なら一緒に行きますか」葵の方から誘ってくるなんて珍しい事もあるものだ。俺はそうそうに白鳥家を出て行った。双子のこいつらがいることを知っていたのに。だから嫌われている筈なんだがな。何故こんな対応なのか解らずに。それでも断るのも気が引けて俺は双子の弟達と一緒に歩きだした。いや、歩き出そうとした。急に俺の携帯が着信を告げた。かけて来た相手を確認すると、そこには『美鈴』と表示されており、俺は慌てて電話に出た。「美鈴?どうした?」『鴇っ。どうしよっ。怖いっ』何時もの勝気な声ではなく、どこかに隠れでもしているのかか細く震えた声だった。即緊急事態だと理解する。「今、どこにいるっ?」『大学、の、空き教室の、ロッカー、の中…ッ』「解ったっ。いいかっ、電話、切るなよっ」『うん、…うんっ』俺が急ぎ来た道を引き返そうとした時、葵と棗が何故か引き止めた。「急いでるんだっ」「解っています。美鈴とは兄さんが保護した僕達の妹ですよね、義理の」「そうだっ」「オレ達も、妹に目を向ける余裕がなかったからね。少しばかり、手を貸させてよ」そう言って、双子は何処かに電話をかけている。「僕達の知り合いが義妹と同じ大学に通ってる。探して守って貰うよ」「…大丈夫なのか?」「それなりに強いよ。大丈夫」

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